NHK朝ドラ「まっさん」の主人公は、私の故郷・竹原
~人の想いの偉大さに気付かされました。

竹原の旧い町並みにある、今は亡き竹鶴政孝氏の生家

竹原の 旧い町並み
NHK新朝ドラ『マッサン』のモデル
竹鶴政孝とリタ夫妻の「ちょっといい話」
http://thepage.jp/detail/20140914-00000002-wordleaf?page=3
9月29日に始まるNHK朝の連続ドラマ『マッサン』は、
「日本のウイスキーの父」と呼ばれた竹鶴政孝と妻リタがモデル。
玉山鉄二と朝ドラ初の米国人ヒロイン、シャーロット・ケイト・
フォックスが夫妻を演じます。
脚本は『フラガール』『パッチギ!』の羽原大介。
山あり谷ありの夫婦劇が情感豊かに描かれそうですが、
実際の竹鶴政孝・リタ夫妻の歴史もかなりドラマチックです。
運命の出会い
~いつか日本のツヅミと私のピアノで合奏しましょう~
明治27年、広島県竹原町の造り酒屋に生まれた竹鶴政孝は、
大阪高等工業(現大阪大学工学部)醸造科に学び、
洋酒づくりに人一倍の興味を持ちました。
大正7年、卒業を待たずに当代一の洋酒会社、摂津酒造に入社。
阿部喜兵衛社長の好意でスコットランドに留学し、
グラスゴー大学や各地の蒸留所でウイスキーづくりを学びます。
政孝が「忘れがたい運命」と呼ぶ出会いは、留学2年目の6月に訪れます。
同学の女子学生の弟に柔術を教えようと出かけた家の長姉が、
「リタ」の愛称で呼ばれるジェシー・ロベルタ・カウン。
午後のお茶の席、問われるまま望郷の思いを打ち明ける
「真面目で、少し不器用な異国の留学生」の孤独に、
大戦で許婚者を失ったリタは自らの哀しみを重ねます。
別れ際の約束は「いつか日本のツヅミと私のピアノで合奏しましょう」
ひと月後、2人が合奏したのは
スコットランド民謡の「Auld Lang Syne」
日本では「蛍の光」として親しまれる曲でした。
リタの奏でるピアノに末妹ルーシーのソプラノが重なり、
鼓を打つ政孝が「蛍の光、窓の雪」と日本語で唱和します。
後日、研修でフランスを旅した政孝は、リタへのお土産に香水を贈ります。
お返しはスコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩集。
ページを繰れば、あの日ともに唄った「Auld Lang Syne」が
収められていました。
友よ、杯を上げよう。懐かしいあの頃のために。
猛反対を乗り越え
~指抜きが入っていた女性と、銀貨の入っていた男性は将来結婚する~
その年、竹鶴はカウン家の家族とともにクリスマスの夜を過ごします。
パーティのお楽しみは、プディングケーキの中に6ペンス銀貨と裁縫の
指抜きを隠して将来を占う、スコットランドの家庭に伝わるゲーム。
切り分けると、指抜きが入っていたのはリタのケーキ、そして銀貨は政孝に。
占いの謂(いわ)れは「指抜きが入っていた女性と、銀貨の入っていた
男性は将来結婚する」というもの。2人の心は、また少し近づきました。
「あなたが望むなら、
私は日本に帰ることを断念してもよい。この国で仕事を探します」
「私たちは日本に向かうべきです。日本で本当のウイスキーをつくる
マサタカさんの夢を、私もお手伝いしたい」
翌年、政孝のプロポーズに、リタは静かに、しかし力強く答えました。
2人の結婚は、双方の家族の猛反対に遭います。
戸主の承諾が必要な教会での挙式を断念し、
政孝とリタはグラスゴーの登記所で結婚登録書に署名。
家族で唯一の味方だった末妹のルーシーとリタの幼なじみ、
そして登記官だけが立ち会う簡素な結婚式でした。
政孝雌伏の時代 ~やっと日曜日が安息日になりました~
大正10年11月、政孝が3年ぶりに帰った故国は、大戦景気に沸いた
留学前とは様変わりしていました。
摂津酒造のウイスキー醸造計画も頓挫し、政孝は退社を決意。
桃山中学に教師の職を得、リタも子どもたちに英語やピアノを
教えて家計を支えました。
政孝の雌伏の時代、リタは「やっと日曜日が安息日になりました」
と周囲を笑わせたといいます。
その後、政孝は旧知の鳥井信治郎に請われ、寿屋(現サントリー)に入社。
京都・山崎に新工場を立ち上げ、試行錯誤の末、昭和4年に国産初の
本格ウイスキーを完成させました。
そして5年後、寿屋から独立した政孝は、
「ウイスキーづくりの理想的環境」と着目していた北海道余市に、
大日本果汁株式会社(現ニッカウヰスキー)を設立します。
故郷スコットランドを想わせる余市 ~鳴り響く「リタの鐘」~
余市への移住を人一倍喜んだのはリタでした。
三方に延びるなだらかな丘陵、朝夕の山裾にかかる靄。
サケが帰る川やニシンの寄せる海……
故郷のスコットランドとよく似た風景が、目の前に広がっていました。
が、政孝の事業は苦戦続き。ウイスキーの熟成を待つ間の「つなぎ」
として発売したリンゴジュースがふるわず、赤字会社の評判が蔓延しました。
おりしもニシン漁が不振をきわめ、余市の町も活気を失いつつあった頃。
リタは時刻を告げる鐘を鳴らそうと思い立ちます。
朝8時と昼の12時、そして終業時間の午後5時。
カウベルが鳴る毎日3回の時報は、後に町の人々から
「リタの鐘」と呼ばれるようになりました。
悲願のニッカウヰスキー第1号を発売した翌年、太平洋戦争が勃発。
日本国籍を取得していたリタも、町を歩けば罵声を浴び、
ラジオのアンテナを暗号発信機と疑われて訊問を受けます。
小樽や札幌の教会を訪ねる際にも尾行がつき、
函館では連絡船への乗船を阻まれました。
軍事色一色の時代。
「私の髪の毛や瞳が黒ければ」と弱音を吐きそうになっても、
リタは日本人として生きようと努めます。
着物を着て帯を結び、煮物もつくれば沢庵や梅干しも漬ける。
イカの塩辛は、政孝が食べやすいよう、繊維に直角に切りそろえました。
当時の男性の例に漏れず、かなりの亭主関白でもあった政孝を、
リタは守り立て、尽くしました。
が、帰宅時に夕食の膳が整っていないと機嫌が悪くなるくせに、
ときに時間にルーズな夫を「夕食は家で食べるのか食べないのか、
はっきり告げるのが男の礼儀ではありませんか」と諌めることも
忘れませんでした。
そんなリタの誕生日に、政孝は必ずメッセージを添えて本を贈りました。
いまも旧竹鶴邸の書棚には、表紙裏に愛情いっぱいの言葉が記された
多くの本が並んでいます。
戦後、養子の威(たけし)夫妻の子供のために、
リタはひと針ひと針ベビー服を縫い、ときには吊りズボン姿で
煙突掃除に勤しみました。
昼は作りたての弁当を綿入れに包み、自転車で工場に届ける。
そんな毎日の息抜きは、午後3時のお茶。
気分のよい日はバスケットを提げて、ピクニックに出かけました。
余市の町を見下ろす美園の丘で、温かな紅茶を味わう午後。
30年近く訪れていない故郷を、静かに思うひと時だったのでしょうか。
美園の丘に眠る政孝とリタ
~IN LOVING MEMORY OF RITA TAKETSURU~
いま2人は、美園の丘で静かに眠っています。
「IN LOVING MEMORY OF RITA TAKETSURU」に始まる墓碑銘は、
2人の名前と生没年月日を政孝が刻ませたもの。
昭和54年に政孝が没し、その日付が加わりました。
政孝とリタが一緒に歩いたという、余市駅から蒸留所、
リタの名前を冠した幼稚園を経て町役場に至る1.3kmの遊歩道は、
昭和63年に「リタロード」と命名されました。
ベニハナトチノキ、サルビア、マーガレット。
リタの故郷スコットランドが1年で最も美しい6月に、
この道もまた多くの花で彩られます。
(文責・武蔵インターナショナル)
<引用終わり>
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管理人
このNHK朝ドラ「まっさん」は、
人の想いが如何に大きな意味を持つかについて、
つくづく考えさせられました。
竹鶴政孝氏の日本初の本格国産ウィスキーへの執念。
竹鶴氏とリタさんのご両家の猛反対を押し切っての結婚。
様々な幾多の挫折と試練を乗り越え、大きな二つの願いと
想いを成就させたお二人の人生は、とても素晴らしいと思います。
恐らく、挫折しそうな危機は、とてもたくさんあったはずです。
全ては、たった一つの想いから始まりました。
それが今や、巨大な洋酒産業が、日本に根付いています。
生産、販売業務に従事する人は、およそ数十万人。
洋酒愛好家は、数千万人規模に及びます。
本当に、すごい一大事業を成し遂げた功績は、
日本の歴史に燦然と輝き続けるに違いありません。
そして、そこには様々な人生ドラマを見ることが出来ます。
ただ、想いを抱けば、全ての人が成功する訳ではありません。
もちろん、決してあきらめなかった事が大きな要因の一つで
あることは言うまでもありませんが、しかし、それだけではない。
何か大きな秘密があるように感じられるのです。
その秘密とは、一体何だったのでしょうか!?
今の私には、そこまでは分かりません。
ただ、少なくとも、一つだけ気付いたことがあります。
もう一度、自分の本当の願いとは一体何だったのだろう・・・
原点に立ち返り、思い出して見たいと思いました。
そう、自分の心にウソ偽りの無い本当の気持ちと、そして、
願いとは、どんなものだったのかを・・・
まず、そこから再出発しようと思います。
漠然としたものでは、航路が決まりません。
それを整理するところから始めたいと思います。
2011年の3月11日は、私の大きな転換点。
何かをしなければとの強い想いから、二つある自分の仕事を
一つに減らして、全力投球をして来たことを
今、懐かしく思い出しています。
もう一度、あの時の気持ちを振り返ってみようと思います。
竹鶴 政孝・リタ さん、ありがとうございます。
今は安らかにお眠り下さい。
合掌。。。
ウイスキー浪漫 竹鶴の夢 第二話【ニッカウヰスキー】
マッサンの中でエリーが口ずさんだ歌
「The Water is Wide(悲しみの水辺)」カーラ・ボノフ